Baby-Project

「Baby-Project」 自作を語る

〈一〉

 外部から依頼されて制作する映像と違って、何らかの自分の思いを表現する手段としての映像というのは、それが何によって想起されたかを具体的に提示する時、なかなか簡単に説明することが出来ない。
 あるテレビ番組で紹介されたリアルな赤ちゃん人形を見た瞬間、私はこれだと閃いた。だがその意味は、これを使って何かショートフィルムができるだろうという発想の次元ではなかった。ずっと以前から無数に想起され、放置されていたそれらが、リアルな赤ちゃん人形を見た瞬間に、突然融合し、一つの塊となった。その瞬間、頭の中でその完成された映像が浮かんでいたのだから、「閃き」をそうとらえざるを得ない。
 表現をする現場において、その真意までも他者に伝えることが、どれほどの意味があるか、その客観的な判断は難しい。つまり、個人的な《感傷》の問題だ。創作(=芸術)と《感傷》との関係は、切っても切れないもの―と断定し、なおかつ認識として周知されているのならば、堂々とそれを語りきることができるであろう。だが《感傷》が自己の中で混沌と複雑化すればするほど、創作あるいは一つの作品と《感傷》とが結び付いていることを他者に説明するのは、難儀であるし、必要かどうかさえわからない。巷でよくある「制作秘話」というのがそれだが、私はそれを、「Baby-Project」の中で共時性を持たせ、《感傷》の部分にまで掘り起こしたいと考えるのだが、果たしてどうなるであろうか。
 単に映像作品を見るだけでいい、見てもらえるだけで十分である―という別の思いもある。むしろ情報が溢れすぎて説明過多に陥り、作品が曲解されるということもある。しかし、敢えてやってみたいと思う。例えて言うなれば、この作品の結末はこうでこうなってとあらかじめ明かしてしまうやり方だ。
 「Baby-Project」でこれから作ろうとしているものは、長篇映画の起承転結のある最先端の映像技術を駆使した―云々の宣伝文句を並べられるような代物ではない。むしろその反対である。1枚の写真から鑑賞者によって各々の物語が想起されるように、一つの短い映像によって様々なイメージが膨らんでいく、そういう商業映画とは縁の遠い実験映画なのだ。
 ただし、基礎の部分において作る過程は商業映画と同じであること、大義では「映画は娯楽である」という理解は変わりない。昔、アマチュアの映画制作(8ミリや16ミリフィルム)を“小型映画”と称したようだが、私の気に入っている言い方でもある。ともかく、デジタルシネマの可能性をこのプロジェクトを通じて模索できればと思う。

(2010.06.01)

〈二〉

ウェブ茶房Utaro/Utaro FILM [Baby-Project] 企画書

■仮題:「Ballad Lullaby」
■撮影フォーマット:HDV=HD24p/16:9ワイドスクリーン/カラーorモノクローム
■尺:本篇3~5分
■音声:ステレオ
■原案・脚本・撮影・監督・音楽:Utaro
■出演:Utaro
■音楽:「明日の燈を」(作詞・作曲:Utaro)
■制作年:2010年6月~8月
■製作:Utaro FILM
■キャッチコピー:「眠れる安らぎを。」「子供らに捧ぐ未来への子守唄。」

Predict >>> 赤ん坊、眠る、子守歌、父親、平穏、未来、望み

Pitch >>> ぐっすりと眠っている赤ん坊を抱いている父親。子守歌として歌を口ずさむ。

Treatment >>> 主題は「父親と子ども」。何気なく過ぎていく日常。人間としての心の通い合いを失いつつある現代。果たして子供達はいま安心して眠れるであろうか。子供らの未来がより平和な安らぎのある世界となるよう祈り、歌を口ずさむ。それは父親が我が子に対する切なる願いであり、その愛情のこもった子守歌である。


(2010.06.08)

〈三〉

『Drunkard Lullaby』シナリオ第一稿

Drunkard Lullaby
ドランカード・ララバイ
第一稿
Utaro


【登場人物】

マーティニ(男の子の赤ん坊)人形 

その父親 Utaro  三七歳




夏の夜。ある部屋。

スピーカーから海の音が流れている。
そのMDの再生を止め、ディスクを取り出す男(父親)。

手に持たれたハトロン紙の袋。中からウイスキー瓶を取りだし、キャップを緩め、氷入りのグラスに酒を注ぐ。

赤ん坊(マーティニ)の寝素顔。

男はグラスの酒をチビリと飲む。

タイプライターでタイプを打つ。
「Drunkard Lullaby」
その文字がタイトルバックとなる。

子守歌が始まる。
赤ん坊の寝素顔。男が子守歌を歌っている。

スピーカーのある机上に置かれた琥珀色に輝くグラス。

男、子守歌を歌い終える。夜の静寂。
再びMDが挿入され、再生される。海の音。

男は座ったまま眠ってしまい、口元には赤ちゃん用のおしゃぶりを咥えている。



(2010.06.23)

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